
2018/12/11 (火) ~ 2018/12/16 (日)
3331 Arts Chiyoda
出演
高橋ルネ、寺内淳志、名古屋愛(無隣館)、沈ゆうこ(日本のラジオ)
脚本・演出 山本健介
ボードゲームも妊娠も
実際に会って、しないと、
できない。
*
ボードゲームを作ることは、「法」を作る行為と似ている。
デジタルゲームのプログラミングと異なり、アナログゲームのルールの裁定は人が担う。だから、ゲームのルールは絶対なものに成りえない。ゲームのルールは――法は、人が運用することが前提でないといけない。だから、その法は運用しやすいものでないといけない。しかも、法を犯しても罰を与える力がない以上、法に従う事が魅力的なものとならなければならない。思わず従ってみたくなるような法。自分を縛ってみたくなるような法とは、どういった法なのか。
ボードゲーム作家という、親や地元の友達に説明しにくい仕事をしている僕は、一人で黙々と新しい「法」を作るため、ただ部屋に居た。『螺旋城』と名付けようとしているボードゲームの基本的な法は「盤面の側面を一周する」「お互いに相手の次に進もうとしている数を読み合い、的中したら相手の前進を阻止できる」「相手より先に目的のマス目に入るか、相手を殺すことに成功したものが勝利」といったものだ。
「殺すの?」
「うん。相手と同じマスに入ったら、先に居た相手は死ぬ」。
彼女にそういうと、彼女は長い髪をだらりとたらしながら起き上がる。
「バックギャモンとまわり将棋をベースに、運要素の少ないゲームにしたくて」
「あなたはツキがないものね」
「妖怪イチ足りない、に取りつかれているから」
ダイスを使うゲームは苦手だ。
ダイスを使うなら、究極すべてのゲームはくじ引きでよくなってしまうんじゃないか、と思う。
「重いゲームはもう作らないの?」
重いゲームとは、ルールと準備が複雑で、プレイ時間が長くかかるものを指す。
「やってくれる人が少ないから」
彼女は重いゲームに付き合ってくれる数少ない僕のゲーム仲間だ。
「あなたの作るゲームは、説明されるとすごく複雑に見えるけど、やってみるとびっくりするくらい優しくて、だけど意地悪。相手を妨害する手段や、ルールを知ってない人を陥れるハメ技ばかり」
重くなった彼女の体を、彼女は自分ひとりで支えて、どこかへ行こうとする。体は、運要素はなるべく少なくあるべきだ、と思う。そうでなければ、あまりに不条理で、不公平なのではないか。
その一方で、運要素が少なくなればなるほど、ゲームに参加できる間口は狭くなる。妊娠という事実は、運に左右されるものであっていいのか。重い体を女性だけに支えさせていいのか。補助要素を考慮すべきではないのか。法は、その律を犯した時、責任の取り方として罰以外の何かはないのか。僕は罰せられるべきものなのか。どうして彼女は、このゲームを降りないのか。ゲームは誰でも参加できるものでないといけないんじゃないか。彼女は誰とでも寝る女じゃないのか。
それとも、あらゆるものをゲーム、と考えてしまう僕のアナログは、すでに何かに縛られていて、次の一手、運以外で勝利条件にたどり着くには、法を曲げるしかないんじゃないか。
スタッフ
音楽 しずくだうみ
音響プラン 田中亮大(Paddy Field)
照明プラン みなみあかり(ACoRD)
舞台監督 吉成生子
演出助手 藍澤和輝
写真 刑部準也
Web 岡崎龍夫
チラシデザイン 岡崎龍夫
制作 安井和恵
制作補佐 加藤じゅんこ
制作協力 かまどキッチン
総務 吉田麻美
協力 ECHOES