
2012/11/07 (水) ~ 2012/11/11 (日)
シアターグリーン BASE THEATER
出演
伊神忠聡、岡野康弘(Mrs.fictions)、萱怜子、川田智美、北川未来、清水穂奈美、関亜弓、中田麦平(シンクロ少女)、信國輝彦、藤田早織、目崎剛(+1)、山本美緒
脚本・演出 作者本介
コミュニケーションのもどかしさに着目し、声にならない声を共有するツールとして演劇を捉えるThe end of company ジエン社。将棋の対局を一日一手に引き延ばし、120日間かけて勝敗を決める–−という本作の設定は、「日常の行為は、どこからが他人に説明を必要とするのか」という主宰、作者本介の疑問から生まれた。「分かる」境界線は、どこに、どのように生まれるのか。人の対話からコンピューターの言語能力まで、その可能性を見渡す意欲作だ。
初日 7 六歩を指したころの自分は何も考えてなく、38 日目、君の後手の歩が5五でぶつかった時にも僕は鈍感だった。目の前の君の外見はその38 日前から一切変わらないのは、君は所詮、デジタルデータ上のブログラムだからであり、でもネット将棋の、億万の出逢いが、対局が、君の内部をおそらく変えたのだろう。
既に早指し将棋ではプロですら負けてしまうほど、コンピュータプログラムは発達してしまったため、僕は君と戦うときにこう条件づけた。24 時間、 僕は将棋の事を考える。君の事を考える。一秒で 1200 万手読む君に対抗するには、こうするしか対等にはなれない。39日目、僕は君の指した後手5 五歩を取らず、6 五歩と突き、君の角頭をついた。その日は雨だったことを思い出す。横浜の中華街をずぶ濡れになりながら、現実の、声の部分の君と話をしていた。君を構成する脳の部分は手作りで、その外見は僕の好みの人達で構成してみた。目は、リハビリ先で僕に微笑んでくれる受付の1さん、足は高校時代冬の体育なのにジャージを忘れたため仕方なく短パン体操着だった 2 さん、声は、僕に話をしてくれて、歌も歌ってくれた 3 さん、 といったように。3さんは僕に、生きて的な事を言ったらしいが覚えていない。
「人工無能」というプログラム遊びを君は知っているだろうか? こちらの言葉に、オウム返しのように決められた言葉を返すっていう、遊びだ。僕 は君をしゃべらせる。でもそれは君ではない。僕があらかじめこの言葉に反応するよう仕組まれた言葉を返しているに過ぎない。対話じゃない。そこ で僕は君に将棋を教えることになった。高校時代は将棋部だった僕は人と話すことが苦手だったが、将棋なら対話ができるような気がした。二人零 和有限確定完全情報ゲームという言葉を知っているだろうか。二人にとって、有利不利がなく、でも有限で、偶然の要素が入り込むことがなく、お互いの情報が完全に分かるゲームという意味らしい。僕は君がどういう仕組みで動いているのか知っている。君のその一手が、どういう思考で指されたものかは知っている。
でも、46 日目、君は 3 五に同銀と、僕の飛車先に銀を上げてきたのを見たとき、君の事が本当に分からなくなった。分からなくなってはじめて僕は 君に勝ちたいと思った。49 日目、僕は桂馬を1三に飛ばすだろう。無理攻めだろう。分かっている。それでも生き急いでいるのは、別に僕の命が残り少ないからじゃなく、次の君の言葉が知りたい、今すぐ聴きたい、ただきっとそれだけ、それだけなんだ。
スタッフ
舞台美術:泉真
舞台監督:鈴木拓
照明:南 星(Quintet☆MYNYT)
音響:田中亮大
演出助手:吉田麻美 綾門優季(Cui? )
制作:池田智哉(feblabo)
宣伝美術:サノアヤコ